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雨嵐の日⑩

「……先生、は…雷、平気なんです、ね?」 「まぁ、平気なんだろうな。目の前に落ちたらさすがにビビるけど。」 「それは……そう、ですね……。」 「…………江川、お前心臓バクバクしすぎ。どんだけビビってんだよ。」 (違う……これは雷への恐怖じゃないんだ……。) 「お前、顔真っ赤。」 「そ、そんなこと、ない、です…っ!」 (ダメだ……どうしよう……上手く隠せない……。) 「なぁ、江川……。」  一起は強制的に裕紀の方を向かされた。今の一起にとっては拷問だった。 「こんな表情(カオ)されると、勘違いしちまうぞ。」 「こんなカオって……どんな、カオのことですか?」 「今の、可愛い照れた顔。」  一起は裕紀から目をそらそうとしたが、両手で頬を挟まれてそれを拒まれると、裕紀の瞳が鏡になるくらい近くで見つめ合う。  整わせようと荒くなる呼吸も裕紀にはとっくに聞こえていた。 「なぁ……お前さ、門限って何時?」  その問いに一起は震えながら答えた。 「……母には…友達ん家に泊まるって…言います…。」

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