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雨と涙と汗①
「とーと!」
「あれ?まーちゃんじゃん。」
「とーと!」
拓海は娘の茉莉 を迎えに行って真っ直ぐ家路に着いた。
自宅のある棟の10階でエレベーターを降りるとすぐにストップウォッチを首から下げてポテチを食べている隣家の小学生、智之 がいた。茉莉はすぐに智之に駆け寄り、智之も慣れたように茉莉のタックルを受け止めた。
「とーおー!」
「と、も、ゆ、き。」
「とー…うー!」
「うーん、道のりは厳しいなぁ。」
茉莉は恐らく智之のことを呼んでいるが上手く言えない。だがとても楽しそうだった。
「智之くん、こんにちは。」
「ちわっす。茉莉ちゃんのお父さん、今日早いですね。」
「うん。高校は午後から休校だったし、まーちゃんのお迎えも早くしないと、もっと荒れるって聞いたからね。」
「俺は朝から学校休みですよ。雨ってサイコー!」
「こぉー!」
茉莉は智之を真似て拳を突き上げて高い声を出す。それが可愛くて拓海は微笑ましくなる。
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