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マツダくんの本音④

 野村は投球練習を終えたレギュラーの部員にアイシングを施していた。 「野村ってこーゆーの超上手いよな。」  3年の元エース候補だった桑原(くわはら)はアイシングを受けながらそう笑う。言われた野村は「はは。」と笑う。 「俺はスローイングもキャッチングも選手としては足りなかったですから。」 「でもあの松田の球を受けてたんだろ?」 「最初だけです。しかも右で投げててどうしようもなく球速も無しコントロール無しのヘボ球の頃でしたし。」 「確かに、右で投げるのはやめといたほうがいいな。」  桑原は笑いながら周りを見渡す。  そこには「入校許可証」を提げた大人が投球練習を見守っている。次のグループには智裕が投げるからだった。 「高校生であんなスプリットをモノにしてんだから十分だろ。カットボールだってあるし。」 「そうですけど、ここ1週間はかなりコントロールが乱れてますよ。球速よりも正確で緻密なコントロールが武器ですから…これを修正出来ないと……。」 「………気持ちの問題かもな。」 「はい。」  2人の懸念は的中している。
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