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マツダくんの本音⑤

「松田ァァァ!」  智裕の捕球をしていた3年の今中(いまなか)はキャッチャーマスクを外し、立ち上がって智裕に近づく。 「てめぇ、日に日に悪くなってんぞ!すっぽ抜けんのこれで何球目だ⁉︎集中しろ!」 「はい…。」  その様子を見てた野村は智裕の元に駆け寄る。 「松田くん、俺が監督に言ってくるから今日はもう帰って休んで。」 「何でだよ。」 「今中先輩が言った通りだよ。日に日に悪くなってるし、昨日までも追い込み期間とはいえオーバーワークだよ。ダウンランニングと柔軟して帰る準備して。」 「俺は…!」 「これ以上エースがこんな球投げてたら示しがつかなくなる!チームの士気にも影響するんだよ!」  近くにいた野球部員は全員びっくりしていた。いつも穏やかな野村が声を荒げる場面など初めて見たからだった。幼馴染の智裕でさえ初めてだった。  苦虫を噛むような表情で、松田はその場を離れた。 「野村……悪いな。」  今中はバツが悪そうに謝る。 「平気ですよ。俺が監督に報告するので投球練習続けて下さい。」 「ああ、頼んだぞ。」
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