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マツダくんの本音⑥
午後6時過ぎ、拓海は茉莉 と一緒に帰宅した。駐輪場に自転車を停めて、下ろした茉莉の手を引いてエントランスに登ろうとしたら、入口の段差に人が倒れていた。
「うわ⁉︎だ、大丈夫ですか⁉︎」
拓海はすぐに荷物を地面に置いて、倒れている人に駆け寄る。仰向けにすると、それはよく知った顔だった。
「智裕くん⁉︎」
「とーと?」
「智裕くん!聞こえる⁉︎しっかりして!」
智裕は皮膚が赤くぐったりして熱かった。拓海は何度も頬を叩いて呼びかける。
異様な光景を察知した茉莉は拓海にしがみついて泣き出した。
「あぁあああ!うあぁああ!ぱーぱーああああ!」
「まーちゃん……ちょっと待ってね。」
震える手を叩いて、スマホで119番にかける。冷静を戻そうと努め、救急車を要請した。
通話を切ると再び智裕に呼びかけた。
「あらあら、どうしたの?」
1階の住人の老女が茉莉の泣き声を聞きつけて拓海の元に来た。茉莉はまだ泣きじゃくっていた。
「もう救急車呼んだので……すいません騒がしくして…。」
「いいのよ、それより大丈夫なの?」
「あ、あの!10階の松田さんを呼んで下さい!この子松田さんの息子さんなんです!」
「え⁉︎わ、わかったわ…すぐに行ってくるから!」
老女はすぐにエレベーターに乗って、10階に向かった。
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