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オオタケくんの変化⑩
直倫は体育館の裏で壁に向かって文字の書かれたゴムボールを投げていた。目を柔軟にするトレーニングだと直倫が自ら学んだ。
だが今は上の空になってしまっている。
タッ、タッ、と誰かの駆け足が近づく。走る呼吸と声。
「……裕也先輩?」
ボールをキャッチして音の方向を見ると、汗だくで顔を真っ赤にした裕也が肩で息をしていた。
「はぁ……や、やっと見つけたぁー…。」
「どうしたんですか?」
「どーしたもこーしたも、お前への、用事…ゴホッ!お、押し付けられたんだよ!」
裕也は野村から渡された本を乱暴に直倫に押し付けた。直倫は受け取ると表紙を確認した。
「これ……。」
「カッちゃんからだよ。昼休み中に渡さねーと殺されそうだったし。確かに渡したからなっ!」
「ありがとうございます……。」
お礼を言いながらも、直倫の顔は相変わらず浮かない。裕也はそれに苛 ついた。
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