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県大会初戦②

 拓海は茉莉(マツリ)と一緒に松田家にいた。  松田家もケーブルテレビに加入していたので県大会の初戦をテレビで見ることが出来た。試合が始まって、三者三球三振、1回表はあっという間に終わった。 「よっしゃー!にーちゃん3人でピシャリ抑えたあー!」 「たぁー!」  茉莉は幼少期に智裕が使っていた応援メガホンを首から下げて応援する。  智之(トモユキ)は兄の活躍に一喜一憂する。  両親と拓海はダイニングテーブルに座って、お茶を飲みながら見守る。 「おーおー、初っ端から飛ばすなぁオイ。」 「……すごい、ですね…。」 「バテなきゃいいけどねー。あのキャッチャーの子の言うこと聞いてればいいのよ。」  両親は智裕に対してそこまで熱心ではないが、温かく見守っている。特に松田母は怪我をしたこともあって身体を心配している。 「智裕くん、ずっと頑張ってましたから。」 「まぁすぐ負けても国際大会の保護者会やらあるから騒がしいよなー。」  智裕にはすでに今年のU-18日本代表の招集がかかっていた。その案内状は冷蔵庫に乱雑に貼られていた。 「10月に修学旅行を中抜けでそのまま大阪……大変ですね。」 「そして本番はアメリカのフロリダ…あの子だけ羨ましいわぁ。」 「にーちゃんばっか色んなところいけてズリィよな。」 「なー!」 「お、四高の攻撃始まったぞ。」  テレビに映っているのは、打席に立った赤松直倫(ナオミチ)。 (この子、大竹くんが倒れた時に付き添ってた……そっか、この子は大竹くんが好きなんだっけ。)
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