288 / 1000
県大会初戦③
「お、先頭赤松じゃん。大竹。」
「は、はぁ?まー、あいつが1番打率良いって聞いたし?ふつーのオーダーじゃねーの?」
クラスメートの片倉の家のリビングには80インチのテレビがあるくらい広いので、5組の男子(野球部を除いた)19人でも広々と寛 げる。
『さぁ、1番の赤松、初球はボール、よく見ました。』
『1年生で上位打線はすごいですね。』
『第四高校のベンチ入りメンバーで唯一の1年生です、赤松。2球目は低めのスライダー、カウントは0-2。』
『1年生だとまだ情報が少ないですからねー、バッテリーも明らかに警戒していますね。』
『ピッチャー、3球目……。』
カキーンッ
『打った!打球はショートの頭上を越えセンター、が、捕れない!レフトも捕りに行く!赤松は1塁蹴って2塁…3塁、は行かない、ストップです!赤松、低めの変化球を捉えてツーベースヒット。第四高校、1回ノーアウトで得点圏にランナーを置きます。』
男子たちは「うおーーー!」と興奮する。
いつも教室で裕也 に一方的にイチャイチャしてくる変態イケメンの直倫が一瞬で彼らの中でヒーローになった。
「いやー…赤松って実は凄い奴なんだなぁ。」
「なぁ、大竹、俺あんま詳しくないんだけど…あれそんなに凄いのか?」
「そりゃ相手の球を実際に見るのは初めてだからな……すげーよ。」
テレビに映っているのは、プロテクターを外して受け取りに来た部員に頷きながら真剣な顔をする直倫だった。その表情は裕也も見たことがなく、鼓動が1つ、大きく鳴る。
(あれ?赤松……あいつ、赤松、だよな?)
この鼓動と顔の温度を、裕也はまだ認めたくなかった。
ともだちにシェアしよう!