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ツワブキさんのアフターケア④

「試合終わったあと、監督に言われた。俺は次に先発で出るのは決勝戦だってさ。」 「……じゃあ……もしかしたら今日が…。」 「うん。だけど監督や堀先輩たちは決勝まで進むつもりでいる。その自信があるんだよみんな。」 「凄い、頼もしいね。」 「今日あれ打ち過ぎでしょ?アウトになったの主に俺だしダセーのなんのって…チャットは祝福の前に罵倒だったし。もっと打てよヘボ、とかね。」 「あははは…みんな智裕くんに期待しているんだよ。」 「そっかなぁ……。」  どうも腑に落ちない智裕の顔を見た拓海は、肩に手を乗せて智裕の頬に不意のキスを落とす。  智裕は豆鉄砲を食らったような表情になる。 「ねぇ、煽ってない?」 「んー、ちょっと?」 「拓海ぃー。」  智裕は仕返しとばかり、拓海の脇の下や脇腹をくすぐり始めてじゃれる。 「何してんの…?」  浴室のドアが開いていてそこから呆れ顔の智之がいた。  気まずくなる3人は一時停止するが、智裕が「あー」とか唸りながら答える。 「裸の付き合い?」 「はぁ……もうご飯出来るから早く上がれってよ。あ、お湯抜いとけって。」 「お、おう。」  ドアが閉まると、2人は安堵のため息を吐く。拓海は少しだけ拗ねたような顔をする。 「智裕くーん……。」 「だって拓海さんが可愛いことするから…だろ?」  智裕は怒られたお返しと言うように、拓海の額にキスを落とす。 「今日はこれで終わりにする。先上がっててよ……。」 「う、うん。智裕くんは?」 「もうちょっとしてから上がる。」  拓海は少しだけ名残惜しい気持ちに引かれ、浴室を出た。智裕は拓海に聞こえないように、完全に反応したソレを処理した。 (ダメだ、もう拓海さんの匂いでご飯いくらでもいける!すげーいい匂いしたぁあぁぁああぁぁ!お湯のせいでめっちゃホッペ赤くて可愛いし濡れてるし…いやイヤらしい意味でなくて物理的に、それがもう我慢ならん!あーいつになったら県大会終わるんだあぁぁぁぁぁぁ!)  こうして智裕の夏は本番を迎えた。
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