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ドキドキ☆クラス対抗水泳大会②
「おー、お前らしっかり応援しろよー。」
気の抜けた指示を出す5組の担任はシャツを脱ぐと、今年も見事な上半身を露わにする。その瞬間、女子も男子も歓喜に沸く。
「ほっしゃん!仕上がってる!」
「やばい!筋肉やばい!」
「よっ!ミスターサ●ケ!」
「なんか去年より仕上がってねぇか?」
「ほっしゃーん!カッコいー!」
アメフトで鍛えぬかれた肉体は現役男子高校生の誰も敵うものがいなかった。
割と筋肉をつけてきた運動部の男子たちは自分たちの体が貧相に思えて絶望した。勿論、智裕も。
「ほっしゃん!俺の隣に並ばないで!俺がもっとモテなくなる!」
「はぁ?お前元々モテてねーじゃん。あんな快投したっつーのに告白のひとつもされてねーじゃん。」
智裕はガチムチ担任からの容赦ない連打で心臓に槍が突き刺さるようだった。そしてプールサイドの端っこで膝を抱えた。
そして裕紀 の見事な肉体美に触れようとする女子が裕紀の周りを囲む。近くにいた5組の男子たちは怖気 ついて数歩下がる。
「ひえー、ほっしゃんモテモテだなぁ。」
「まぁ顔も元々いい方だし。ガチムチだし。」
一起は裕紀の方には一切振り向かず、クラスメートに競技が始まることを伝えて回る。
だが、一起の隣にやってきた増田は気がついていた。
「江川くん、我慢だよ。」
「……増田さん。」
「大丈夫だよ。多分あっちも江川くんのモテ振りに嫉妬してるから。さっきから江川くんもキャーキャー言われてるし、ね?」
「はぁ……。」
「ま、私も見張っておくから安心しててね。」
増田が優しく背中を叩くと一起は安心した。この状況に泣きそうになっていた気持ちを和らげることが出来た。
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