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ドキドキ☆クラス対抗水泳大会⑧

 智裕は急いで男子更衣室に入ると、パーカーを着た1人の小さな背中があった。 「拓海さん……ごめんっ!」  智裕はその背中を抱きしめた。拓海はビクッと肩を震わせて、すぐに離れた。  振り向く拓海の顔は困惑して、涙を流していた。 「拓海さん……その…あれは…元カノなんだけど……向こうから迫られてきて俺もどうしたらいいか分かんなくて……でも、ごめん…振りほどくの遅かった。」 「ううん…わ、分かってるよ。それくらい…わかってるんだけど……。」  拓海は自分に言い聞かせても嫉妬や困惑の感情を抑えることが出来なかった。 「俺、大人なのに…情けないよね……智裕くんを困らせちゃって…。」 「そんなことない!俺が悪かったんだから!ヨーコさんが言ってくれなきゃ俺あのまま何されてたか……ホント、俺って……。」  智裕は一気に疲れてその場に座り込んだ。拓海はあわててしゃがんで覗き込む。 「ヨーコさんに言われた通りだよ……本当にクソヘタレだな俺……ハッキリ言えなかったから拓海さん傷付けてさ……はぁ…。」 「そんなことないよ……俺が勝手にモヤモヤして……ごめんなさい……。」  拓海は智裕の耳に恥ずかしそうにキスをした。  音もなくそっと唇を触れただけのもの。

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