306 / 1000

ドキドキ☆クラス対抗水泳大会⑨

 落ち込んで俯いていた智裕は顔を上げて拓海を見つめた。 「さっき見学の女子たちが智裕くんのこと、カッコいいとか惚れるとか言ってたんだよね……。」 「マジで⁉︎俺そんなの全然聞こえてない!江川っちばかりキャーキャー言われてたのに!」 「………キャーキャー、言われたいの?」 「いや…まぁ……ちょっとは?エースだし…身体も鍛えてるし、さ。」 「俺は、すごい嫌だった……っ!」 「え。」  瞬間に拓海は智裕に飛びついた。その勢いで智裕はまさかの拓海に押し倒されてしまっていた。  智裕が見上げると、拓海はまたフルフルと震えて半泣き状態だった。 「だって……智裕くんがカッコいいの、知ってていいのは俺だけだもん。」  拗ねたように拓海は本音をぶつけると、そのまま智裕に深いキスを仕掛けた。 (何これ、何のサプライズ⁉︎拓海さんが、俺を襲ってる⁉︎)  キスをしながら智裕は拓海ごと上半身を起こす。  そしてようやく解放されると、拓海は智裕の首に顔を埋める。 「やだ……俺……こんな気持ち……重いよね?ごめんね…。」 「いや……ちょっと俺…嬉しすぎて……心臓やばい。」  ドギマギとした様子で智裕がそう言うと、拓海は智裕の左心房に耳を当てる。 「…本当だ……ドキドキ、してるね。」 「拓海さん!俺、今すっげー我慢してるから!これ以上可愛いことしないでっ!」 「へ?」  不意に向けられた拓海の上目遣いで、智裕の糸が切れた。

ともだちにシェアしよう!