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決勝戦前夜③
地元の人ヒーローになっている時の人こと智裕は、家で夕飯の食卓についていた。
「やったー!トンカツだぜ、にーちゃん!」
「あー……オフクロ……俺、お粥にしてくれない?」
「何言ってんの!明日は勝つ!そしてスタミナをつけなさい!」
「だって胃が痛いんだよぉぉ…。」
母の験担ぎはありがたいが、今の智裕にとっては拷問だった。
初戦とは違い、明日は名門中の名門との対決だからか、智裕にのし掛かる重圧は凄まじかった。
隣に座る智之 は呑気にトンカツにかぶりつく。
「うめー!やっぱトンカツうめー!にーちゃんも食えよー!」
「やばい…胃が……。」
「なんだなんだ、地元のヒーロー様がそんなんでどうするんだよ。」
「その地元のヒーロー様っつーのが余計なんだよ!去年はこんなことなかったのに…。」
「そりゃ1年だし期待もされてなかったからだろうな。」
「何で親父はこういう時だけ俺詳しいって感じ出すかな。」
「見てみろ、新聞の地域ページ。」
父が2人に新聞のある1ページを見せて、そして書かれている文をこれ見よがしに音読する。
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