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県大会決勝戦(12)
「松田の言うことは一理あるぞ。」
グラウンドから目を離さずに監督は呟く。
「これで味を占めたな、バッテリーは。」
次の1球は外角に外れたストレートを直倫は見送って、カウントは1-1となる。
3球目は振らせるために島田はスプリットを選択した。
「赤松は松田のスプリットを間近で見ている。」
直能は承諾して、ランナーを警戒してクイックモーションで球を投げた。
「赤松にとってあのスプリットの落差を見極め打つのは、容易い。」
(松田先輩のに比べたら、止まって見える…!)
カキーンッ
『高く上がった打球はセンターとレフトの間に飛んでいく。守備は追いかける、追いかけて、フェンス直撃取れなかった!2塁ランナーホームイン!赤松は2塁へ、2塁に…セーフ!赤松直倫、2打席連続で打点を入れました。これで4-0とリードを広げます第四高校。』
野村はすぐに記録した。そして1塁コーチャーをしている2年生が駆け寄って直倫に簡潔に聞き出す。それはすぐに清田たちに伝えられた。
「松田先輩のより甘いですよ、ねぇ…。」
「清田くん、見せつけてやろうか、年季の違いを、ね。」
「次の赤松兄とゴリラをスプリットなしで料理してやるか……。」
「あ、でもアレは監督にも内緒だから最後のイニングにしようね。」
声を潜めて野村は清田に指摘した。まだ智裕が1球も投げてもらってない状況だが清田はプロテクターを装着した。
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