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県大会決勝戦(13)

 2回裏は注目の赤松直能の第1打席。  しかし智裕はストレートとチェンジアップだけで内野ゴロに打ち取った。問題の5番打者、栗原を迎えた。 (うん……ゴリラだ。)  栗原はおそらく190cm近くある大柄な、いかにもホームランを打ちそうな雰囲気だった。  だが圧倒されているのは栗原だった。 (松田智裕……去年はスタンドからだったけど……やっぱ18m先にいると余計に怖ぇな。挨拶の時はそうでもなかったのに。)  わずかな、ほんの数ミリの後ずさりを清田は見逃さず、ミットを打者の近くに構えた。  智裕はそれに目掛けて要求通りにストレートを投げた。そして快音が響くと、打者はまたもや怯んでしまった。そして栗原はそのまま三振に沈んだ。 「うっしゃ!ゴリ……ラあぁあ!」  直接的にゴリラと言ったらあとが怖いと思った智裕は控えめに喜んだ。栗原は神経を削られてしまい、ベンチで部員たちに慰められている。  それを見た智裕は「いいなー。」と思ってしまった。

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