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県大会決勝戦(14)

 4-0のまま、試合は6回まで終了した。次はいわゆるラッキーセブンと言われる、何かが起こりそうな雰囲気もあった。 「堀先輩。」  この回の先頭打者の堀を呼び止めた清田は堀の真横に付き、耳打ちをした。 「赤松直能にトドメ刺してやりましょう。」  その言葉で堀はヘルメットを正して、バッターボックスに向かった。 (赤松直能……マウンドから引き摺り下ろしてやるよ!)  直能の球は疲弊して失速していた。堀は見逃さない。思い切り真芯で叩いた。  清田を塁に出したところで、直能はマウンドを降ろされて守備についた。  直能は1塁の守備についたのでそこで清田と邂逅する。 「君達には完敗だよ、清田くん。」 「……死ぬほど聖斎の映像見ましたけど、やっぱ実物はイケメンですね。」 「ありがとう。褒め言葉と受け取っておくよ。」  球場のスタンドでは聖斎のエース降板を嘆き、すすり泣く女性も少なくなかった。 「そちらのエースは、完投できるかな?」 「完投出来なきゃ甲子園は無理ですよ。」 「ははは、野球は9回2アウトからってよく言われるから、油断と過信はダメだよ。」 「過信じゃないです。自信です。」  清田はホームベースの方向を真っ直ぐに見て、はっきりと言い切った。

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