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県大会決勝戦(15)
8回、聖斎は中継ぎ陣が健闘しても1失点してしまった。
5-0で聖斎は無得点のまま攻撃が始まる。
ここまで100球近く投げている智裕にはまるで疲れが見えない。寧 ろ終盤になってからの方が勢いに乗っているようにも見えた。
2アウトにしたところで回ってきたのは3番打者。
すると清田は1塁側のベンチを見て頷くと立ち上がった。
『なんと四高バッテリーは敬遠です。この次は4番の赤松を迎えるのですが……これは一体何の意図があるのでしょうか。』
『先ほどの打席は赤松選手に単打を与えてしまいましたから、普通は勝負に出ないと思いますが……しかし3番は左打者で赤松選手は右打者なのでそれが関係しているのかもしれません。』
困惑で球場はどよめく。四高以外で冷静だったのはネクストバッターで準備している直能だけだった。
(直倫……君はとても優秀で、熱くて、気迫がある、良いチームに巡り会えたんだな。これは感謝しなくてはいけないよ。)
直能の遠くからの視線に、ショートの位置にいた直倫は気がついた。
そしてバッターボックスに立つ兄の姿を見届ける。
(兄さん、俺は…憧れた松田 先輩 の後ろで守れて幸せだ。)
直能は、久し振りになる苦い敗北を味わって、夏を終えた。
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