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試合終了③
「兄さん!バスは?」
「まだ監督が戻っていらっしゃらないから大丈夫だよ。」
既に汚れたユニフォームから聖斎の夏服に着替えていた赤松直能は、数百倍の輝きを放っていた。
直倫以外の四高野球部はキラキライケメンオーラに圧倒されていた。
「松田くん。」
「は、は、ひゃい⁉︎」
「とてもいい勝負だったよ、ありがとう。」
「ふわぁあ……こ、こ、こちらこそ……。」
智裕は開いた口が塞がらないような間抜けた顔をして差し出された手を握った。直能は力強く握手をした。
すると直能はこれまた綺麗な笑顔を智裕に向ける。
「ははは、直倫から聞いていたが、本当にマウンドを降りたら別人だな。」
「は、はい。」
「いや、気を悪くしたならごめんね。だけどそれは凄い事だと思うんだ。僕には真似出来ない。本当に僕は君を尊敬するよ。」
「いえいえいえ!滅相もございませぬ!俺みたいなドヘタレが赤松様に褒められるなどぉぉぉぉ!」
智裕は両の手で直能に握手して頭を下げる。それは弱者が強者にひれ伏している図だった。
四高野球部全員が「ヘタレだな。」と智裕に呆れの眼差しを向けていた。
「最後の“フロントドア”、まさか体験出来るとは思わなかったよ。」
「あ……あの…俺、赤松のにーちゃん雑誌で見たりしてすげーって思って!だからあれくらいのものを習得しないと絶対三振に出来ねーって思ってたんです!」
「ははは、光栄だな。本当、高校最後の試合に松田くんと戦えて幸せだよ。」
「ふぁあ………俺、赤松のにーちゃんになら抱かれてもいい!」
変態発言が出た瞬間に横から堀のストレートパンチが智裕にヒットした。
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