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試合終了⑤
「えへへー。」
「キモい、松田、死ね。」
「えへへー。直能さんと写真撮っちゃったー♪」
第四高校野球部は電車に揺られて学校に向かっていた。
吹奏楽部も同じで、智裕はクラスメートの野村と南と古川と固まっていた。
智裕のスマホにはキラキラしたイケメンと顔が緩んでいるシケメンのツーショット写真が映っていた。
「松田くん、学校に入る時には顔、気をつけてね。」
「しかし赤松くんのお兄さん、本当にやばいね。芸能人みたい。」
「スタンドから見ててもキラキラしてたよね!いいなー松田くん、ツーショット写真。」
「俺ファンになっちゃったよ……はぁ…直能さん…。」
「なんなの松田ばっかイケメンと知り合いになってさ、世の中不公平よね。」
南は提げていたトランペットの入ったケースを智裕の膝裏にガツガツと嫌がらせで当てる。
「いたい、痛いって。」
「あんまり惚れ惚れしてたら石蕗 先生にチクっちゃうよー。」
智裕は、ハッとしたように拓海 のことを思い出した。
「あ、俺、勝ったからご褒美が倍になる。」
「は?」
「俺戻ったら拓海さんに会わなきゃ。拓海さん帰ってんのかな?野村、俺直帰して、」
「馬鹿なの?報告会と監督と堀先輩と松田くんは会見あるんだけど。」
「えー!俺パスー!」
「あーあ、森監督に明日のオフ取り消されてもいいんだなー。」
野村はニコニコと悪魔のような言葉を並べて智裕を撃沈させた。
車内アナウンスで智裕たちは次の駅で降車することを知る。
「ねぇ野村くん、学校行く前に駅のフルーツスタンドのスムージー飲まない?」
「あ、それいいね。俺まだ1回しか飲んだことないや。」
「私初めてだよ。いおりんは?」
「この前バナナとピーチのスムージー飲んだよ。今は期間限定でスイカスムージーやってるよ。」
智裕以外は女子トークに花を咲かせていた。
智裕はスマホの振動に気がつき、確認すると、拓海からのメッセージを受信したので光の速さでアプリを開いた。
_今日の夜9時に、俺の家に来てください。
目線を上に動かして現在時刻を確認する。17時34分。ため息を吐いて項垂れた。
(なげーよ……マジでなげーよ……9時…うう……このお預け感は厳しいーーー!)
電車は目的の駅に到着した。
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