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もう1人のマツダくん③
「3番の左を敬遠して、わざわざ4番の赤松と勝負したんですわ……ホンマやることゲスすぎて怖いわぁ。」
「何や…これ……。」
「……“フロントドア”。」
中川に抱えられたままなんとか映像を見た八良が真面目な声でその球の正体を口にする。
「ツーシームのストレートやと思ったら打者の真横でドアが開くみたいな曲がり方する……プロでも使える投手はそうおらんぞ。」
「おいおいおい…インコース寄りのボール球かと思ったらストライクゾーンに一瞬やないか。」
「いわゆる、魔球ってヤツやな。せやろ?ハチロー。」
ようやく降ろされて自由の身になった八良はおもむろに先程まで口論をしていた畠の隣に立つ。
そして真剣な雰囲気で畠の肩を叩く。
「俺がフロントドア投げたとこで畠が逸らして終わりや。」
「このクソチビがぁぁぁぁぁ!」
怒りが頂点に達した畠によって乱闘が繰り広げられた。静観するのは金子と飯田だけだった。
「部長…こんなんで優勝出来るんですか?」
「ははは……明日の朝練ランニング10周追加やな。」
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