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勝利の報酬③

「いや、部活の連中には黙ってんだけどお前うちのクラスに出入りしてるから知ってるかと思ってたんだけど。」 「初耳です。」 「そうか、マジで黙っといてくれよ。」 「黙っておきます。」 「よし。」 「それで何が経験者なんですか?それと不純なんですか?」 「不純じゃねぇ。やることやってるだけだ。」 「それを不純っていうんだよ、松田くん。」  今日は勝った高揚なのか、野村のナイフは鋭い。直倫は頭上にハテナを浮かべている。 「松田くん、前の彼女に二股されて失恋したその日に石蕗先生に告白されて好きかどうか分かんないのに付き合い始めて今やウザいくらい溺愛してるんだよね。」 「全部一気に説明するなよ!」 「そうだったんですね、松田先輩。」 「ま、まぁ…そういうことだ、し?それに俺は大竹と10年くらいの付き合いだからわかるんだよ。大竹は本当に赤松のことが好きだ。」  安心するように笑ってもらい、直倫は背中を叩かれた。 「これから照れ隠しで好きじゃねーとか色々言うけど、イヤよイヤよも好きの内、だからな。お前は悪代官みてぇに強引にしてりゃいいんだよ。」 「イヤよイヤよも好きの内、ですか。」 「今風に言えばツンデレってやつだね。大竹くんはそういう性格で昔から墓穴を掘りまくってたね。」 「確かに、わかるわー。」  2人の笑い声は直倫を勇気付けていた。 「あの、裕也先輩の家、教えてください。」  そう言うと、直倫は智裕と一緒の方向へ歩き出した。

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