353 / 1000
アカマツくんの想い①
智裕は直倫を連れて、昔も今もよく行く近くの公園のブランコに乗りながら、呼び出した相手を待っていた。
「大竹んチはあそこな。そんで俺と宮西 はそこの団地、でもう1コ向こうの川沿いのとこに高梨 んチとヨーコさんチ。野村は町内が違うけどまぁまぁ近いとこに住んでて、ここでよく野球みてぇな遊びやってたんだよ。」
「へー。先輩は抜群に上手かったんですか?」
「いや。俺女子より下手くそだったわ。ずっと右投げ右打ちでやってても上達しなかったんだけど、それを反対にしたらこの通り。」
「そんなことってあるんですね。」
「けど打つ方は左でも全くダメ。大竹の方が上手いのがシャクにさわるんだけどな。」
「裕也先輩って続けてたら野球部でもレギュラーだったんじゃないですか?」
「うーん、でもあいつちっちぇーしな。昔からチビだったけどまさかマジで止まるとは思わなかったわ。本人諦めてねーけど。」
「そういうところも可愛いんです。」
智裕は「うげぇ」と気色悪がりながらブランコをもっと勢いよく漕ぐ。
「なぁ、何で大竹に惚れたんだ?あいつに惚れる要素なんか女子目線でも1コも思い当たらねーんだけど。」
「俺、ここで裕也先輩に出会ったんです。」
「ここ⁉︎」
直倫は懐かしそうに天を見上げて話し出す。
ともだちにシェアしよう!