お昼過ぎ、拓海は松田家に愛娘を引き取りに行った。 「すいません、本当に助かりました。」 「いえいえ、石蕗さんもお仕事大変でしょー。お疲れ様です。」 　松田両親は茉莉(マツリ)ちゃんを幼児向けアトラクション施設に連れていったようで、父は腰に湿布薬を貼っていた。 「まーちゃん、楽しかったかな？」 「あーい！」 「また遊び行こうねー。」 「ばいちゃー！」 「すいません、有難うございました。」 「はいはーい。」 　バタンッ 「智裕、あんた何死んでんの？」 　智裕はドアを開けっ放しで自室の床に転がっていたので母は蔑(さげす)んだように訊(たず)ねた。 「………育児疲れ。」 「あ？何言ってんの？お昼食べたの？」 「うん……。」 「ま、どーでもいいけど。」 「じゃあ訊(き)くなよ……。」 　自室のドアを母に閉められた。智裕は疲れてはいたがずっと鼻の下が伸びきっていた。