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Wマツダの再会①

 そして開会式の前々日、第四高校野球部は新大阪駅に降り立った。  どこから嗅ぎつけたのか、マスコミのカメラが智裕を追っていた。  促されるまま、智裕は取材に応じることになってしまった。  その姿を後ろから四高ナインが見守る。  同じブルペンチーム(投手と捕手)の5人は智裕のガチガチに緊張しきった姿を見て笑いを堪えるのに必死だった。 「あの強豪の聖斎学園を破って甲子園初出場ですが、今どんな心境ですか?」 「あ、あの、本当に出れることが夢のようなので、今自分の持つ力を全て注ぎたいと思います。はい。」 「初戦はあの“西の松田”との投げ合いになると予想されていますが、組み合わせが決まった時はどうでした?」 「えー……松田先ぱ…選手は今の高校野球で最強の投手なので、打てたらいいなと…思いました。」 「意外と謙虚なんですね。」 「いえ、多分こう言わないとあとで痛い目に遭いそうなので…。」  以前は前もって準備していたからハキハキと凛とした姿勢で受けていたが、サプライズされると本来のヘタレが全面に出てしまっていた。  隣では森監督も取材を受けていて、智裕は横目でチラリと見る。監督はいつも通りで少しだけ智裕は羨ましく感じた。

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