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いざ、馬橋学院へ⑤

 監督!お疲れ様です!  おそらく70人近くいるであろう男子生徒たちが、乱れず声を揃えて挨拶をした。  たったその一言で馬橋の強さと統制力が、智裕には分かった。 「神奈川の代表の第四高校の森監督や。挨拶せぇよ。」  森監督!おはようございます! 「今日から四高(ウチ)の生徒が迷惑をかけますが、何卒よろしくお願いします。」  宜しくお願いします!  四高の運動部の中で野球部はダントツで挨拶や返事に乱れがないと言われていたが、馬橋はその比ではなく、バスから降りようとしてた四高の全員が足がすくんでいた。 「おい、降りるぞ!」 「自分の荷物持ったら素早く指示に従えよ。」  なんとか堀と今中が動き出したことで部員たちの重い腰が上がった。 「お先やでー。」  気楽そうな声を出して先に降りたのは、八良を担いだ中川だった。 「シュンちゃん先輩、なんで八良先輩担いでんすか?」 「あ?このアホ、昨日寝れへんかったからコテーと寝よったわ。遠足前のガキと一緒や。こいつ1回寝たら起きひんの、まっつんも知っとるやろ?」 「………あー、お疲れ様っす。」  智裕は呆れて中川に同情の言葉を送る。

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