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新たな同士たち③

「ここの野球部マジで厳しいからマネージャーも大変やし、妄想でもしとらんとやってられんわ。」 「ホンマそれ!汗臭いユニフォームの洗濯やらドリンク補充の力仕事やら地獄やで。それくらいの対価がないとやってられへん!」 「私まだ1週間しかやってないですけど、お2人の気持ちよっっくわかります!」  3人はベッドの下段に腰をかけて、スマホ片手に夕飯の時間まで腐女子トークに花を咲かせることにした。 「今日から食堂が楽しみやなぁ。な?キョーカ先輩。」 「そうやなぁ……。」 「何が楽しみなんですか?」 「馬橋(ウチ)の男子だけやと飽きるやん?せやけど今日から四高(そっち)の男子も食事だけは絡むやん?」 「それにそっちの松田くん、ウチんとこのハチローと仲良いみたいやし。」 「それは……捗ります!」 「あ、でもハチローはウチらの妄想の対象外やな。」 「え?どうしてです⁉︎すごく可愛い顔していらっしゃるのに!」 「ハチロー先輩ってアホやし人懐っこいし妄想をすぐ現実にするから…こう…背徳感が無いんよね。」 「私らが、Wマツダでチューしてくれ、って言えばするやろうし……そういうのは萌えへんのよ。わかるかな?」 「うーん……あまりに積極的すぎると確かに引いちゃいますね。」 「それにハチロー先輩、ミス馬橋のかなちゅん先輩と付き合っとるしなぁ。」 「ドラフト1位で入団したら結婚するー!って1年の時からずっと言っとるし。」 「あんな可愛い顔して彼女持ちですか⁉︎」  増田がショックを受けていると外薗がスマホの画面を見せてきた。 「うわー…可愛い彼女ですね……でも……百合百合しい。」  見せられた画像は、八良(ハチロー)と恋人のかなちゅんの教室で制服を着た普通のツーショットだった。  普通に仲良しの男女、なのに増田は違和感を少しだけ感じた。 「百合百合しい!せやねん!ルリちゃんわかってる!」 「ハチロー先輩から男感じるのって野球やっとる時だけやな。」 「野球って凄いですよね、普段ヘタレな松田くんもカッコよく見えちゃうんですもん。」 「うちの金子部長もバッターボックス立ったら仏から阿修羅になるで。」 「野球マジックなんでしょうか、ねぇ。」  話がだいぶ悪口になったところで外薗のスマホからアラームが鳴った。 「もう夕飯の時間や。配膳手伝わなで。」 「あ、私も手伝います。」 「ほんま?ありがとな。」 「じゃ、行こか!」 「はい!」 (楽しみだなぁ。新カプ誕生させてやる。)  3人とも声には出さないが考えはシンクロしていた。

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