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賑やかな食堂③
配膳をしてもらった清田と野村はお互い近くに座った。その席には馬橋の正捕手と1年生のマネージャーがいたからだった。
「ここ、いいですか?」
「あ、あぁ…ええですよ。」
清田が一声かけると、掛けられた方は遠慮がちに答えて少し気遣いで横にズレた。
「えっと…初めまして、清田恭介 、2年です。」
清田は特に笑顔もなく事務的に自己紹介をする。仲良くするつもりではなく、内情を探るスパイのような声色。
「お、俺も2年です。畠晃 、言います。」
おずおずと会釈をする。清田は何と無く「犬っぽい」と思ってしまい、クスッと笑った。
「へ⁉︎なんかおかしなこと言いました⁉︎」
「あ、あぁ…別に何も…同級生だしタメ口無しでいいんじゃない?」
「ふぇ?あ、あぁ…せやな……うん。」
畠は少し下を向いてしまい、その顔も赤らんでいた。
それを見ていた飯田 は眼鏡をクイっとあげて呟いた。
「ホンマ初対面には人見知りやなぁ…畠さん。」
「や、やかましいわボケ!」
飯田に悪態をつく畠を見ていると、少し智裕を思い出した清田はまた笑ってしまった。
「清田くん、笑ったら失礼でしょ。」
「いや…だって、松田みてぇだしさ…面白ぇじゃん。」
「は?俺が松田?」
畠が頭に「?」を浮かべて間抜けな顔をすると清田は笑いながら説明する。
「うちのエースも、ほら…マウンドじゃ凛としているけど、グラウンドを1歩出たらヘタレで愚図で泣き虫でビビりで卑屈で、まるで二重人格なんだよな。」
「お、俺は二重人格やあらへん!」
「畠さん、そちらの正捕手さんの言うこと当たっとるで。野球離れたらアンタただのアホやもん。」
「飯田!先輩に向かってアホってなんやねん!」
ムキになって否定するところも智裕にそっくりで、諌 めていた野村も笑ってしまった。
畠は3人からの反応に恥ずかしくなって半泣きになり、プルプルと仔犬のように震えた。清田は益々おかしくて笑ってしまう。
「清田くん、絶対性格悪いやろ…!」
「性格良かったらあんな化け物の女房役は無理だ。」
「うぅ……俺かて3年押し退けて正捕手になったんに……。」
いじける畠だが、清田はそれを警戒していた。きっと自分以上に性根が悪いと予想していた畠が、こんなにも素直で臆病な性格をしていたからだった。
(畠 の会話に嘘臭さはない……多分松田と同じ天才 なんだろうな……。)
じっと見られる畠はまたモジモジしだした。
(な、なんやねん…そない見て…恥ずかしいやんかぁ…。)
それを見た飯田は「キモっ」と吐き捨てた。
「清田くん…その……宜しくお願いします…。」
もぐもぐとご飯を食べながら尻すぼみで畠が言うと、清田は笑って応えた。
「宜しくな、畠くん。」
(畠晃…どんなリードをするのか、どうやって松田八良を制御 しているのか…試合までに掴んでおかねーとな。)
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