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マツダくんとアカマツくんの夜⑤

(あれ、八良先輩って彼女いるって言ってたよな。そしたら彼女を抱く側だよな?いやいや、俺は男は拓海さん限定だから元々ノーマルなんだけど、は?は?意味わからん!あれ抜き合いとか相互オナニーじゃなくて、完全にセックスやっちまってんじゃん!)  全速力で部屋まで駆け込んで、ドアを閉めてドアにもたれかかってズルズルと座り込んだ。荒い呼吸を整えなかまら頭を冷静に戻そうと必死になる。 (明日から…あの2人をどうやって見ればいいんだよぉ…。)  放心していると直倫がスッキリした様子でトイレから出てきた。 「すいません、占領してしまって。」 「あ、あぁ、べ、べつに……俺、食堂行って水もらってきてたし。」 「そうですか……あ、俺も水もらわないと…。」 「お、おう。早くしねーと……しょ、消灯時間になるぞ。」  ドアを塞いでいる智裕は素早く立ち上がって退くと、水を小型冷蔵庫に入れて自分の寝床についた。  直倫はペットボトルを手にすると、急いで部屋を出た。  数分後、ガチャ、とドアが開く音がして直倫が部屋に戻ってきた。  水を同じように小型冷蔵庫に入れて、寝床につきながら智裕に話しかける。 「馬橋の松田さんと中川さんってセフレらしいですよ。」 「何なんだその情報⁉︎」  智裕はガバッと起き上がった。直倫も起き上がるが至って普通のテンションで喋る。 「さっき水取りに行ったら、松田さんの喘ぎ声すごい聞こえて、食堂で会った馬橋の部長さんに()いたら、『1年の時からや。』って言ってました。」 「……それをフツーに聞けるお前もすげぇよ。」 「松田さんは彼女さんいるけど、試合の後とかめちゃくちゃ興奮して自分が女役になって掘られないと満足出来ないから中川さん襲ってるみたいです。」  智裕は唖然としつつ、心の中で中川を(あわ)れんだ。 「……先輩も甲子園の試合の後、そんなことならないですよね?」 「お前は何を言ってる。」 「普段は石蕗先生に挿入している側なのに、実はそれでは駄目とか。」 「元々俺はノーマルだ。そして男は拓海さんしか無理だから。」 「良かったです、おやすみなさい。」 「こんな会話でアッサリ寝てんじゃねーよ!」  合宿1日目の夜は、直倫の謎生態に頭を悩ませて過ごすことになる智裕であった。

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