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エガワくんの約束③

 お手上げのようなリアクションを取って、クスっと笑い用件を伝えた。 「明後日の甲子園の2日目第3試合、担任特権でチケット2枚貰ったんだよね。」  どうだ、と自慢げにポケットから取り出したチケットをヒラヒラと見せびらかした。  それには“第XX回 夏の全国高校野球選手権 1回戦 2日目(第3試合) 外野自由席”と印字されている。 「あー、松田の試合ですか。なんかプレミアチケットになってるみたいですね。」 「明後日、新幹線とホテル予約したから、2人分。」 「………それ、誰が行くんですか?」 「俺とお前。」 「はぁ⁉︎」 「さっき一起のお母さんにもお許し貰ったから。」 「根回し早すぎでしょ!……ほんっと、強引過ぎ…。」  一起は大きな溜息を吐きながらその場にしゃがみ込んだ。  裕紀は「くくく。」と愉快に笑う。そしてしゃがんで一起のツムジにキスをした。 「ま、行きたくなかったらいいんだけどね。」 「…………ズルいです。」 「大人の知恵と言いたまえ。で、行きたくないの?」 「………だって…。」  一起は顔を自分の膝に埋めながらこもった声で言葉を紡いだ。 「先生と……ずっと、一緒って……緊張、し、ます……。」

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