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エガワくんの約束⑥

 おもむろに母がテレビのチャンネルを替えた。 「何か見るの?」 「烈風 甲子園。」 「なんかどハマりしてない?」 「ちょっとねー。あの神奈川の松田くんたちが負かしたところのピッチャーが本当カッコ良くて、お母さんときめいちゃった。」  アイドルに夢中になったかのような乙女のテンションになる母に一起は苦笑いをするしかなかった。  そして始まった「烈風 甲子園」、丁度「馬橋学院 対 第四高校」の特集が流れていた。 『東の松田、西の松田、両投手は様々な人に影響をもたらしていた。』 『神奈川県予選で圧倒的な打率と走塁を見せた、第四高校1年・赤松(あかまつ)直倫(ナオミチ)もその1人だ。』 『決勝戦で当たった神奈川の名門・聖斎(せいさい)学園でエースナンバーを背負った赤松直能(ナオタカ)は直倫の兄だ。直倫も中学までは聖斎学園の中等部に所属し兄の背中を追いかけるのだろうと誰もが思っていた。』 『しかし、直倫は遠く離れた、しかも公立高校の第四高校に進学。理由はただ一つ、松田の存在だった。』  一起は目を丸くした。 「え……そんなん聞いたことないんだけど。」 「あら、この子知り合い?」 「まぁ、ちょっと……。」

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