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エガワくんの約束⑦

 一起の目で、今まで直倫が智裕を慕っているような言動を見たことがなかった。  むしろ勉強出来ない上にヘタレな智裕を清田や野村と一緒に叱責しているような場面をちょいちょい見かけていた。しかも最初は何を勘違いしたのか、裕也を奪いに敵として現れたのだった。 「松田くんってすごいわねぇ。」 「そうかな?」 「だって、野球の試合だけで1人の人生動かしちゃったんでしょ?この歳で親元を離れて学校に通うなんてよっぽどの覚悟がないと無理よ。それを決断させた力があるってことね。」 「……そうだね……俺、そんなすごい奴の頭叩いたりしてたんだ。」 「一起も、松田くんに人生変えてもらったでしょ?」 「え?」 「学校、楽しくなったんじゃないの?」  母は優しく笑って一起に問いかけた。 「お母さん嬉しかったわ。松田くんたちがウチに来て一起が勉強教えてて……一起、家でも見たことないくらい怖かったけどね。」 「あー…もう色々と面倒になって…純希も恐がってたよね。」 「最近はなんだか違う感じで幸せそうだわ。好きな子でも出来た?」 「へ?」 (好きな子……子、じゃないだろ!あのガチムチ!)  母はニヤニヤしながら一起を見るので、一起は誤魔化すようにテレビを見ながらコーヒーを飲む。 「星野先生も言ってたわよ。一起は本当に松田くんを大切な友人だと思っていることがわかるので、ぜひ松田くんを間近で応援させてやりたい、って。」 「え……っと……。」 「本当、いい先生とお友達に恵まれたわね。」 「う……うん……。」 「先生にご迷惑かけちゃだめよ。気をつけていってらっしゃい。」 (先生に迷惑かけられてるの俺なんだけどなぁ……。)  しかし母が本当に幸せそうな顔をしているのを見て、一起は安堵した。 「行ってくるね。ありがとう、お母さん。」

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