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華麗なるアカマツ家②

 騒つく四高野球部に、赤松母は1つお辞儀をした。 「みなさん、いつも直倫がお世話になっております。」 「あ、いえ…俺たちの方が色々助けてもらってます。」 「実家を離れ、不慣れな土地で、親としては心配していましたが、どうやら杞憂だったみたいで安心いたしました。」  堀と森監督がペコペコと赤松母とお辞儀をし合っていると、呆けていた智裕の前には赤松父が立っていた。  智裕は思わず萎縮し、声が裏返りながら「こんにちは。」と挨拶をした。 「君が、松田智裕くんだね。」 「は、はい。」  赤松父は智裕を真っ直ぐに見つめて、真剣な顔をしながら智裕の手を取った。 「ありがとう、戻ってきてくれて。」 「は、はぁ…。」 「直倫は、昨年の君の投球に惚れて第四高校を選んだ。最初は君がいなくて直倫をうちに呼び戻すつもりではいたのだが、君が戻ってきてくれて、直倫が四高(ココ)で野球を続ける理由も出来た。いつも直倫は電話で君のことを嬉々として私たちに話してくれているよ。ありがとう、本当に。」 「マジっすか⁉︎え、それ初耳なんですけど!」 (おい!2ヶ月近くいてそんなこと聞いたこと一度もねーぞ!)  智裕は驚いた顔をして直倫の方を見た。  しかし直倫は深刻そうな顔をして直能と話していたので智裕の視線には気が付かなかった。 「明日は松田くんが先発するんだろう?」 「多分…オーダーはこれからなんでわからないですけど。」 「応援しているよ。頑張ってくれ。」 「あ、ありがとうございます。」  固い握手を交わして、智裕はお辞儀をすると、赤松父はその場を離れた。

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