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激闘前夜②
智裕は腑に落ちなかったが、それよりも恋人の声を聴きたいとスマホの通話アプリを起動する。拓海の番号をタップして電話をかける。
1コール、2コール、3コール…
『…はい。』
「拓海さん、今大丈夫?」
『うん、まーちゃんも寝てるから。』
「……あはは……やっぱ拓海さんの声安心するなぁ。」
智裕はゴロゴロしながら、顔が朗らかになった。
『…ほんと?』
「うん。明日さ、俺先発だし……今日開会式でグラウンド入ってさ……あーやべーってなった。」
『緊張したの?』
「緊張どころか、帰りてぇってなった。」
『そうなんだ……。』
電話の向こうの拓海の声は、なぜか少し落ち込んでいるようだった。それに気づいた智裕は少し困惑する。
「拓海さん、どしたの?元気ないけど。」
『え……そうかな?そんなことないけど。ちょっと疲れてるだけかも。』
「本当に?」
『うん。』
「えー、ちゃんと言わないと俺心配して失投しちゃうかも。」
『え……そんな……の……うぅ……。』
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