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激闘前夜③
ちょっと冗談で言ったつもりだったのに泣き出されてしまい、いよいよ智裕はベッドから降りてアタフタし出した。
『とも、ひろ……くん…と、赤松、くん……が……なんか……くっついて、たり……馬橋、の…ぐすっ、松田、さん…と、仲良くて……ぎゅーしてて……。』
「はい?」
『ぎゅーって、するの……ぼく、だけなのに……ぐすっ、智裕くん…は、違うのかなって……うぅ…。』
「えーっと……何?俺が赤松とくっついて馬橋の八良先輩と抱擁していた、と。それは何処情報?」
『ま、すだ……さん……たち…。』
智裕は思わず天井を見上げて額を手で押さえた。
「それ絶対違う!アイツら面白がってるだけだから!八良先輩が抱きついたのも、向こうの中川先輩って人が一緒になって引き剥がしたし、赤松がくっついたのもなんか俺脅迫されただけだし。」
『ふぇ…?』
「相変わらずこっちでもオモチャにされてるだけだってば……はぁ…もう、拓海さーん。」
智裕は脱力してベッドに腰掛けた。
「帰ってきたらめっちゃ甘やかして、俺が愛してるのは拓海だけって教えてあげるからね。」
『……うん。』
「いい子にして待ってて、な?」
『待ってる。明日、頑張ってね……。』
「うん、元気出た。ありがとう、おやすみ。」
『智裕くん、大好き。おやすみなさい。』
電話を切る瞬間、拓海が電話口にキスをしたようで、智裕の耳にリップ音が響いた。
智裕はスマホをストン、と落として、ベッドの上で「ぬあぁぁぁぁ!」と悶えた。
「何してるんですか?」
「……愛の試練に耐えているのだよ、赤松くん。」
「………はぁ。」
智裕はにやけ顔をして喜んだ。
だが、この夜が明けたらその笑顔も消えてしまうとは、この時は誰も想像出来なかった。
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