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激闘の日【朝】①

 第四高校が出場する甲子園1回戦(2日目)の早朝、一起は新幹線に乗る駅の構内でソワソワしながら待っていた。  手に少し大きめの鞄を提げていた。夏休みなので早朝でも人は多かった。 「一起、待った?」  在来線の改札から待っていた人物が手を上げて一起に近付く。 「いえ……。」 「そっか。飯は?」 「コンビニのおにぎりを食べました。」  一起は目を合わせられなかった。やって来た裕紀はサマーニットに黒のスキニーパンツというカジュアルな服装で、行き交う女性もチラチラと見るくらいにカッコ良かった。  普段学校ではポロシャツやジャージやらの適当な動きやすさ重視の服装だからか、私服の裕紀に対して一起は耐性がなかった。 「……なぁ、今日明日は敬語禁止な。」 「え……そんなの無理ですよ。」 「うちのクラス、お前と野村以外は俺にタメ口使ってるぞ。」 「えー……。」  一起はそう言われて普段のクラスの風景を思い出す。そして裕紀の要求通りの言葉遣いを絞り出す。 「じゃあ、行こうぜ、ほっしゃん。」 「………いや、ほっしゃんはやめろ。ムカつくから。」 「えー、じゃあ何て呼べばいいんですか?」 「そーだなー……ヒロたん♡とか?」 「却下。ほらもう新幹線来ちゃうから、行くよ、。」 「ま、及第点かな。」  裕紀は一起の手を取って、新幹線のホームに歩き出した。

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