484 / 1000

激闘の日【試合開始前】①

 午後になり、甲子園球場の駐車場に馬橋学院のバスが2台停まった。  それらを待ち構えていたカメラや記者、一般の人々も押し寄せて警備がロープを張り規制をかけ騒然とする。   「あれが馬橋と四高(ウチ)?」 「みてぇだな…うひゃー、すげーな。」  一起と裕紀は遠くからその騒ぎを見ていた。  集団からは「松田ー!」「中川ー!」などと叫ぶ声が出てくる。 「松田…大丈夫なのか?」 「石蕗先生との破局を乗り越えたんだから大丈夫だろ。」 「いや、あんま関係ないような……。」 「そうか?」  一起の手をそっと取り、入場口へ向かった。 「裕紀さん、手…人が……。」 「いいじゃねーか、新婚旅行なんだからよ。」 「な…俺らいつ結婚した?」 「これからこれから。」  飄々とする裕紀の手は熱くて、自然と一起はキュッと握り返した。

ともだちにシェアしよう!