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激闘の日【1回表】①

 区役所のロビーはクーラーを全開にしているのに、じわりと汗が流れるほどの熱気に包まれていた。  四高 パパパンッ   四高 パパパンッ   四高 パパパンッ  地元の人たちが持参した鳴り物や配布された団扇(うちわ)でリズムを取りながら応援を始める。2年5組は先陣を切って応援に力を入れた。 『まず、1回表は第四高校の攻撃。1番は1年生の赤松直倫(ナオミチ)です。赤松は神奈川県大会において1年生ながら打率は5割を越えています。』  ネクストサークルでバットを振る直倫の姿は凛としていた。 「大竹ぇ、彼氏応援したれー。」 「ばっか!ちげーよ!大声でそんなこと言うなバーカ!」 「照れるなって、新婚さん。」 「うるせーぞ!黙れ!」  裕也(ユウヤ)は顔を真っ赤にして揶揄(からか)いに反論した。  しかし画面に映る直倫に目をやると、キュッと口を閉じて真剣に見入った。 (直倫……。)

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