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激闘の日【前夜の約束】①

 前日の夜9時、裕也はベッドの上で胡座(あぐら)をかいてスマホを片手に悩んでいた。 (うーん…消灯時間まであと1時間だけど、ミーティングとかしてっかもだし。てかピリピリしてるとこに電話とか大丈夫か?集中してたりしたら邪魔だろうし……だけど、言いてぇことあるし…うーん……。)  裕也は通話ボタンをタップした。 (で、出なかったらメッセージ飛ばせばいいんだし!そうだそうだ!そうすりゃいいんだ!)  しかし予想に反して3コール目で相手と通じた。 『裕也さん?どうしました?』 「え……あ、あぁ、明日だろ?馬橋との試合、お前が緊張してねーかなーって、先輩の気遣い?」 『………クスッ。』 「あ、テメー笑ったろ!俺にだってそれくらいの思い遣りはあるぞ!」 『いや…違うんです。嬉しくて……ありがとうございます。』  直倫の声は徐々に和んでいったのが裕也にも分かった。 「……てか今電話大丈夫なのか?」 『はい、ちょうどミーティング終わって部屋に戻ってきたところだったんで。』 「え⁉︎もう9時だぜ⁉︎」 『明日現地で時間が取れないかもしれないというので最終的に詰めて話し合っていたんです。松田先輩はまだ終わってないんで…。』 「ひえぇ……カッちゃんと清田、鬼だなぁ……。」 『でもあの2人がいなかったらここまで来ることは難しかったと思います。松田先輩も完璧に相手を抑えられたのは清田さんのお陰だって言ってますし。』 「ふーん……そっ、か……。」  裕也は脱力して、ボスンッとベッドに沈んだ。

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