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激闘の日【前夜の約束】②

 天井を見つめながら一呼吸して言葉を発した。 「あのな、トモのこと、頼むって…前に言ったの覚えてるか?」 『……はい。』 「……清田たちからは去年のこと、聞いてないよな?」 『うっすらとしか……。』  裕也が目を閉じると浮かんでくる去年のこと。  野球に人生かけてきた幼馴染が、命と同等の左腕を壊されて全治1ヶ月、骨や筋を戻すために手術まで行われた。  術後、数日経ってから見舞いに行くと、「別に元気だし。飯の味付けうっすいんだよねー。」と笑っていた。  裕也は智裕の痛々しい点滴やギプスに怒りを覚えた。  2学期が始まっても智裕は入院していた。  放課後、グラウンドを見たらダラダラと楽しそうに野球をやっている上級生と同級生が目に入った。3年の昇降口からは坊主頭が伸び始めてギャハハと笑う元野球部がいた。 (なんでアイツらは笑っていられるんだよ。なんでアイツらが野球やってんだよ。)  報復する時が来たら、と取っておいたのは智裕に手を下した上級生の決して暴かれたくない醜聞。  もう我慢の限界だった。  裕也はその武器を使用した。

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