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激闘の日【前夜の約束】③
「本格的に野球部を潰したのは俺だ。トモの暴力事件を有耶 無耶 にされかかっていたこともあったけど、PTAや高校野球ファンの掲示板に暴力事件の疑惑を投げかけて、先輩らの二股とか変態なとことか他人にバラされたら嫌なもの全部流した。それで野球部は崩壊して無期限の活動停止になったんだ。純粋に頑張っていた人たちも巻き込んでしまった。」
『…………でもそのおかげで、俺たちはここまで勝ち上がってこれたと思います。』
瞬間、裕也は苦しくなっていた心臓が少しだけ楽になった。
直倫から軽蔑をぶつけられることを覚悟していたのに返ってきた言葉は優しいものだった。
『裕也さんが粛清した人がいなくなったことで結束と意識が向上して、どれだけ厳しい練習も耐えられました。今の状況に不平不満をこぼす部員はいません。そうじゃなかったら県大会で1回も勝てなかったと思います。俺も今ここにいませんし、松田先輩も帰ってきませんでした。全部、裕也さんのおかげです。』
「………………そう、か……。」
『許せなかった先輩も、ここまで勝てたらもうそんなことは忘れています。それに裕也さんがまだ糾弾されるのであれば、俺が守ります。だから安心してください。』
「………っ!」
宥 めてくれる直倫の優しい声が、ずっと靄 がかかっていた裕也の心底を晴らしてくれる。
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