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激闘の日【2回表】①

 2回表、第四高校の攻撃回は再び1塁側スタンドが大いに盛り上がる。  かっとばせー! ほーりっ!  マウンドの八良が見定めているのは四高の主砲。堀は至って冷静を保っている。  呼吸を一定にしながら昨夜消灯ギリギリまで頭に叩き込んだ対策を整理する。その際に監督から言われた言葉もあった。  _恐らく松田八良のマウンド上でのオーラや睨みで怯んでしまうこともあるだろう。  _呑まれたら負けだ。心穏やかに練習通りのスイングをすれば勝機は増える。  今にも逃げ出したいくらいの空気が18m先から放たれている。だがグリップを握る力も構える腕、肩、腰、膝、目線もいつも通りに。 (おもろいやん。)  ゾクゾクする勝負の前に八良も心の中でニタニタと笑う。八良と畠が選択した球は、左打者の堀へ向かうような全力ストレート。  堀は1歩下がって避けてしまった。判定はボール。 (なんだ……ストレートなのに腹んトコ(えぐ)っていくような……こうやって威嚇するのか……。)

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