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激闘の日【2回表】⑦

『第四高校、堀が懸命に走りましたがタッチアウト。これで1アウト、ランナー1、3塁です。これは馬橋のセンター・金子、ナイスプレイでしたね。』 『そうですね。普通でしたらホームへの送球は間に合いませんが、金子選手のレーザービームで追いつきましたね。』 『タッチしたキャチャー・畠も唖然としてます。恐らく畠も何が起こったのか分かっていないのかもしれません。』 『普段から厳しい練習をしている中で身体に染み付いていた動きだと思われます。素晴らしいですね。』  リプレイされる画面越しでも伝わる、レーザービームに込められた殺気と投げた金子の鬼気迫る何か。 「あら、この金子くんってウチに来たことあるわよね?」 「あー、智裕が連れてきたなぁ。東京に用事あるからって泊まってった…こーんなおっかねぇ子だったか?」  智裕の両親は金子の顔を見て何かを思い出し、母はテレビ台の横にある棚から割と新しいフォトアルバムを取り出してテーブルに置き、何かを探す。 (わっ……智裕くんの昔の写真だ!)  拓海は初めて見る智裕の写真に目を輝かせる。そして母が探していた1枚の写真が見つかった。 「あった。ほら、金子くんが都内の学校見学でっていうのでウチに泊まったのよね。」  テレビに夢中になっていた智之も「なにー?」と興味を示しテーブルに駆けてきた。  その写真には穏やかな顔をした爽やかな青年と真っ黒なショートヘアの智裕が夕飯を食べている姿が写されている。 「この人覚えてる!すっげー優しかったにーちゃんのセンパイだろ?さっきのレーザービーム投げた人この人?」 「馬橋学院に進学したとは智裕から聞いてたけど、まさかキャプテンだなんてねー。」 「すげーなぁ…アイツはビビって馬橋行かなかったけどな。」 「しょうがねーよ、にーちゃんヘタレだし。」 「智之がビービー泣いたのもあるのよねぇ。」 「な…っ!そんなに泣いてねぇよ!」 「え?智之くんが泣いたの?」  拓海が笑うと智之は益々顔を赤くする。そして拗ねてテレビの方に顔を向けた。拓海が笑いながら「ごめんね。」と謝ると智之は機嫌が戻った。

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