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激闘の日【2回表】⑧

『さぁ第四高校、1アウト、ランナー1、3塁でバッターは7番の白崎。馬橋学院はまだ油断出来ない状態です。第四高校側のスタンドのボルテージは益々上がってます。』  かっとばせー! しっらさきー!  しかし白崎の打球はバウンドせずにショートがしっかり捕球、そしてそのまま当麻がタッチアウトになり一気に3アウトで攻守交代。球場からは大きな溜息がもれた。 『まだこれから2回裏ですがこの盛り上がりは凄まじいですね。』 『あわや馬橋学院が先制されるところでしたからね。第四高校の主軸がしっかり仕事をしていますから、イニングを重ねると松田投手はさらに攻略されるかもしれませんね。』 『そして2回裏の先頭打者は主砲・中川駿太、続くのは先程レーザービームを繰り出しました主将(キャプテン)・金子雅嗣(マサツグ)、松田にとっても苦しいイニングになるかもしれません。』  再び映った智裕は、先程の何倍も険しい表情になっていた。キャッチボールをしながら清田が何か声をかけているのがわかる。 「にーちゃん……やべーな。別人だよあれ。」 「とーと?とーと!」 「あれはとーとだよ茉莉ちゃん。」 「とーと、ないない!」  茉莉はテレビ画面に智裕の顔が映るとバンバンと叩いて怒っている。拓海は慌てて茉莉を抱っこしてテレビから離した。 「こら、まーちゃん!テレビさんを叩かないの!」 「あーあー、石蕗さんいいのよ。そうね茉莉ちゃん、とーと、こわいこわいだもんねー。」 「とーと、めぇー!」  智裕が怒っているから茉莉はそれを諌めようと怒っていたらしい。それを拓海に怒られたので茉莉は泣いてしまった。 「まーちゃん、テレビさんを叩いちゃダメでしょ。めっ、だよ。わかった?」 「やあぁあ!とーと、ないないいぃぃい!あーーー!」 「やだじゃないの…もう、まーちゃん……。」  茉莉の泣き声で、拓海の心は不安で一杯になった。一時、離れていたあの智裕が脳裏によぎった。 (大丈夫、きっと…大丈夫……うん、智裕くんは、智裕くんだから…俺が信じないと…!) 『2回裏、馬橋学院の攻撃です。』

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