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激闘の日【2回裏】②
中川のバットは空を切った。1球目と同じ軌道のストレートかと思ったら、それはグイン、とほぼ直角に変化した。
(まっつん…の……フロントドア!)
球審の「アウト!」の声が響くと四高側を中心に歓声があがる。中川は素早くバッターボックスから出るとベンチに戻っていった。
そしてネクストバッターですれ違った金子に耳打ちをする。
「最後のやつヤバイで。」
「すっごいやん、フロントドア投げられて、なぁ……。」
「か、金子…?」
「俺が仕留めたるわ。」
中川は去っていく金子の背中を青ざめた顔で見送った。
次に青ざめたのはキャッチャーの清田だった。迫り来るオーラに殺意を感じた。
チラリと金子の表情を見ると、笑っていない目でニヤリと笑っていた。
「お願いします。」
一応は礼儀正しくバッターボックスに入るが、マウンドを見つめるその目は暗殺者と同じ。
(金子……ダメだ、ビビったらダメだ。中川を抑えられたんだからやれる!松田は…。)
マウンドの上の智裕はしっかりとした目で金子を捉えている。
清田は自分を落ち着かせて、サインを出し、ミットをしっかり構えた。
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