514 / 1000

激闘の日【2回裏】③

 投げたスライダーは見送られボールの判定。だがコースは間違っていなかったので、清田は智裕に頷きながら返球した。 「ナメられたもんやのう……。」  ボソッと聞こえた不気味な呟き。清田は背筋が凍ったが、動揺をしないようにと暗示をかける。 (俺がここで崩れたらダメだ…!松田が、あんだけの気迫を持って立っている……1人で、背負っている!)  するとベンチから先輩たちの声が聞こえてくる。 「清田ぁ!気圧されるな!」 「打たせていこー!」 「落ち着いていけー!」  その叫びが心地よく響いて、強張った心が楽になる。 (松田!勝負してやれ!) 「俺には魔球(フロントドア)を使うまでもない…ってことか……?」

ともだちにシェアしよう!