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激闘の日【2回裏】④

『打球は伸びて、伸びて…ライトスタンドに入ったあぁあ!馬橋、今大会初ホームランは主将(キャプテン)の金子です!松田のストレートを見事に捕らえました!松田はライトスタンドを見つめている、そして金子は今軽やかにダイヤモンドを1周しています。今ホームインして馬橋が1点を先制!』  区役所ロビーには溜息や悲鳴が上がった。 「うわー…146キロって……打てんの?」 「つーかあの人マジで怖い。」 「うへぇ…俺絶対あの場に5秒も立ってらんねぇよ。」  裕也、宮西、高梨、里崎はただ茫然と立っていることしか出来なかった。  ようやく言葉を発しても声は震えていた。 「トモが……あんな…簡単に……。」 「マジかよ……馬橋強すぎじゃね?」 「嘘……松田……が……。」 「大丈夫かな……松田……。」  普段はヘタレな幼馴染はマウンドの上では最強だと、敵なんていないと思っていた、そうやって見てきた4人。  その最強のヒーローが打たれてしまう場面を初めて目の当たりにするショックは思った以上に大きかった。 (トモ……直倫……崩れるな……頼むから……上に…!)  目の前が真っ暗になりそうだったが、そんな4人の不安を打ち消したのは画面に映る気丈なバッテリーと内野陣だった。  マウンドに集まる四高の6人は冷静だった。清田が主に指示を出し全員それに頷いて気合いを入れ直してまた自分の持ち場に戻る。 「直倫…。」  裕也の目に入ったのは凛々しい顔をした直倫だった。その表情が裕也の心を落ち着かせる。  _裕也さんの為に俺は明日戦います。  昨夜の言葉がふとよぎった。 「直倫いぃぃ!頼むぞおぉおぉぉ!」  どうか遥か向こうの空に届くようにと人目をはばからずに裕也は叫んだ。

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