521 / 1000
激闘の日【3回裏】①
四高1点ビハインドの場面、次の下位打線は三者凡退を期待されて智裕はマウンドに上がった。
『馬橋学院の攻撃、この回先頭打者は8番・渡井、2年生です。大阪大会では2本のホームランを打っている強打者です。』
『馬橋学院はベンチ入りしている2年生も大変強いですからね。』
『渡井の後は9番・松田八良、そして打者2巡目に入り1番の沼尻に戻ります。3回で打者を1巡だけというのは、それだけ松田が出塁を許していないということです。』
『素晴らしい投球ですね。金子選手からのホームランは痛かったですが、その後も立て直していますから、ここは3人で抑えてもらいたいです。』
かっとばせー! わったらいっ!
かっとばせー! わったらいっ!
トランペット、グロッケン、太鼓、揃う声、響き渡るその音は智裕には聞こえていないようだった。
画面に映し出された智裕の顔はただ一点に集中している。
「いやいやいや……どっちの松田も怖すぎ。」
「てゆーか、馬橋の松田さん怖かったよね。」
「なんかめっちゃ赤松くん睨んでたよねー……すっごい可愛い顔している人だから余計に怖かったぁ…。」
智裕のことを知る四高の生徒は智裕に戦慄し、知らない人たちは両エースの気迫に圧倒され声援を忘れていた。
裕也と宮西はスポーツドリンクを飲みながら画面から目を離さずに話す。
「赤松が2打席とも出塁したことで馬橋のプライドがズタズタになったんだろうな。うわー怖っ。」
「明らかにマークされたよな…昔こういう打席の次ってぶつけられたりしなかったか?」
「それ昭和のプロ野球な。今やったらマジでシャレになんねぇよ。」
「直倫って乱闘したら人格変わりそうだよなー。」
「外国人みたいに突進するよりはにじり寄って行きそうだよな。」
「あー………迫力凄そう。」
「松田は速攻で逃げそうだよな。」
「あー…マウンド降りたらヘタレだもんなー。想像出来るわー。」
カキンッ
バットの快音が聞こえて、2人はハッとした。
ともだちにシェアしよう!