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激闘の日【3回裏】②
渡井に投じた4球目、智裕のボールは平凡な回転数、つまり失投した。
清田がヒヤリとした瞬間に、渡井のバットが鳴り響く。
打球は2塁と3塁の誰もいない場所を突っ切る。渡井はヒットを確信するように全力疾走で1塁へ。
「堀さあああぁああん!」
清田はマスクを外してレフトの堀へ叫んだ。堀は全速力で前に出る。
すると誰もいなかった堀の前に影が現れる。
「うらぁああああああああ!」
雄叫びをあげながら、無謀な体勢から矢のようなスローイングをするのは直倫だった。
ファーストの藤崎はベースを足から離さないように前のめりになって必死にその球を捕球する。そして塁審は片手を下ろして「アウト」を判定した。
その瞬間、四高側は歓喜に、馬橋学院側は残念な叫びに湧いた。
派手に転んだ直倫の左半分は土で汚れた。
それを払いながらまた立ち上がると、四高側から「ナイスプレー!」「赤松ー!」と叫びが飛び交う。
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