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激闘の日【4回表】②

(松田、お前は凄すぎて俺は一生勝てないと思う。なら少しでもお前の背負うものを軽く出来るなら…!)  カウント2-2、白球の軌道を堀の目が捉えた。  カキーンッ  思い切りの良い快音が響く。スタンドは入りそうにないとわかると堀は全力で走る。  堀の脚をマークしていなかった畠は何かを叫んだ。マウンドでは八良が地面に向かって怒鳴っていた。  そんな中を堀は駆け抜ける。 「逝ねぇぇぇえええええ!」  センターから鬼のスローイングが放たれる。  堀は三塁ベースに向かってスライディングをする。伸ばした右足がベースに触れたのが先だった。  塁審の「セーフ」の判定で四高ベンチは一斉に喜んだ。馬橋ベンチは至って冷静だった。  次の打者、清田はネクストバッターサークルからゆらりと立ち上がってグラウンド全体を見回した。 (松田八良……乱れている。堀先輩に直球勝負を挑んで3ベース…赤松と立て続けにこれじゃ、プライドがズタズタになっているはずだ。)

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