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激闘の日【4回裏】①

『4回の表、清田の犠牲フライで第四高校1点、同点となりました。4番の堀、松田の速球をしっかり捕らえスリーベースヒット。チームの主軸が全力で走り抜きました。』 『本当に素晴らしいですね。5番の清田選手も惜しかったですけど、中々の長打でしたし、第四高校の打線も“西の松田”をかなり攻略してきたようですね。』  再び智裕がマウンドに上がる。その顔は少しだけ穏やかだった。 「………すげぇ…あの4番の人。」  智之は画面に映し出された堀の顔を見ながら目をキラキラさせていた。 「何でこの人四高にいるんだよ!なぁ、とーちゃん!」 「さぁな。」 「茉莉ちゃんのとーちゃんは?先生だから知ってる?」 「え……あ、あんまり会ったことはない、かな?確か生徒会の副会長さんでお勉強も出来るんだよ、4番の堀くん。」 「うわー!勉強出来ねーにーちゃんとは大違いだな!」 (そういえば智裕くん期末も赤点ギリギリだって星野先生頭抱えてたなぁ……。今度勉強教えなきゃかな?あー…でも智裕くんが近くだと俺の心臓がもたないかも……いやいやそれは教職員として!うん…!) 「ぱーぱ?」  智裕の勉強を自分が見てあげるという場面を想像しながら百面相をする父親を不思議そうに見つめる茉莉。  そしてふと顔をあげたら、4回裏の攻撃が始まっていて、智裕のしなやかで美しいスリークォーターが目に入った。  画面右下にはカウント2-2が表示されている。いつのまにか先頭打者に対して4球も投げていた。

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